今年のノーベル賞は二人の日本人が受賞しました。坂口志文大阪大特任教授の生理学・医学賞と北川進京都大特別教授の化学賞受賞です。
日本人として初めてノーベル賞を手にしたのは湯川秀樹博士が1949年に物理学賞を受賞しました。
湯川博士は又エッセイの名人でもあり、戦後間もない1947年に「知識と知恵とについて」という小論を寄稿されております。以下抜粋です。
知識が外部から摂取されるものであるのに対して、知恵はむしろその人の内部から自ら生まれ出てくるものを主体としている。(中略)しかしこの両者はもとより分離し得るものではない。獲得された知識がやがて知恵と溶け合って一体となり、後者の成長、脱皮を促進するのである。
上述湯川博士の主旨を稽古事に当てはめると、先生から教えてもらったことはまだ知識であって血肉化していない。それを咀嚼し一人稽古で更に昇華させ自身の知恵としたものが技などの向上の為に非常に大切であると思う。
録音機など無かった時代の噺家の稽古は、一つの噺を三遍稽古と言って師匠が弟子に三回口述し、弟子は集中力をもち覚えます。
1回目: 師匠の口演を聴き、演目の全体像を把握する。
2回目: 細かいセリフ回しや間合いを覚える。
3回目: 呼吸の仕方や抑揚など、より詳細な部分を吸収する。
以後弟子は何度も何度も噺を繰り返し練習し、師匠の前で口演しOKを貰ってから初めて寄席の高座にかけました。
この様に教えて貰った事を自主稽古で消化、吸収し自身の血肉化にするプロセスが必要ですね。
